日本頭痛学会

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片頭痛発生における硬膜の関与を示唆するMRA所見

Khan S, et al. Meningeal contribution to migraine pain: a magnetic resonance angiography study. Brain 2019;142:93-102.

 

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】

 片頭痛発作時の頭痛発生起源に関しては現在でも議論の多いところであるが、硬膜起源あるいは中枢起源の2つが提唱されている。 硬膜は三叉神経が分布していて侵害性の刺激に対して反応する組織であり、特に硬膜動脈近傍で感受性が高いことが知られている。 最近では、片頭痛発作時には三叉神経系に感作が生じることで、通常の血管拍動や脳圧の周期的変化による応力が拍動性頭痛として感知されると考えられている。 また、動物実験のデータから、片頭痛発作時には活性化された三叉神経の神経終末からニューロペプチド放出が起こり、その結果として血管拡張や血漿タンパク質の血管外漏出が起こると推測されている。 しかしながら、ヒトにおいて三叉神経活性化を客観的に観察する方法は確立されていない。 本研究では、その代替方法としてMRA上の中硬膜動脈 (MMA)周囲長測定を採用することで、硬膜三叉神経活性化を評価している。

【方法・結果】

 18~50歳の女性の前兆のない片頭痛患者で、70%以上の発作において一側性頭痛を呈する症例をスクリーニング対象とした。 さらに、これらの患者にシロスタゾールを投与して片頭痛様発作が誘発された患者を被験者とした。 過去3日間片頭痛発作がなく、過去5日間頭痛がないことを確認した上で、ベースラインとなるMRA撮影を行い、その後200 mgのシロスタゾールを服用させた。 4時間後に発作早期スキャン、翌日に発作後期スキャンとしてそれぞれMRA撮影を行った。 一部の症例では、発作早期スキャン施行後に、スマトリプタンの6 mg皮下注を行って、その1時間後にMRA撮影が施行された。 スマトリプタン非治療群では、プロメサジンとメトクロプラミドのみで頭痛治療が行われた。最終的にMRA撮影が完了した症例は30例であった。 しかし、4例では前兆のない片頭痛の診断基準を満たさなかったため除外された。 残りの26例の中でスマトリプタン治療群は11例であった。26名中片側頭痛を呈したのは18名で、8名は両側性頭痛であった。 ベースライン撮影では、測定対象となった全ての動脈に関して、発作時の頭痛側と非頭痛側との間に周囲長の差は認められなかったことが確認された。 発作早期スキャンでは、ベースラインに比較して頭痛側MMA周囲長は有意な増加を認めた (5.23 ± 0.57 mm vs. 5.00 ± 0.50 mm, P = 0.005)。 非頭痛側ではそのような周囲長増加は認められなかった。増加周囲長の比較では、頭痛側0.24 ± 0.37 mmに対して非頭痛側0.06 ± 0.37 mmであり有意差が認められた (P = 0.002)。 一方、中大脳動脈 (MCA)、内頸動脈吻側部 (ICAcerebral) 内頸動脈海綿静脈洞部 (ICA cavernous)、浅側頭動脈 (STA)、外頸動脈 (ECA)の各部位には頭痛発作中には両側性に周囲長増加が認められた。 スマトリプタン投与によって、MMA、ICAcavernous、ECAおよびSTAの周囲長が両側性に減少したが、頭痛側と非頭痛側との間に有意差は確認されなかった。 MCA、ICAcerebralおよび脳底動脈には明らかな変化は認められなかった。 スマトリプタン非投与例での発作後期スキャンでは、MMAとICAcavernousの両側性拡張が観察された。頭痛側と非頭痛側との間で有意差は認められなかった。

【結論】

  前兆のない片頭痛症例では、シロスタゾール投与による片頭痛様発作時に頭痛側でMMA拡張が認められたことから、硬膜における変化が生じている可能性が支持された。 また、その変化はスマトリプタン反応性であった。本研究は、MMA周囲長が片頭痛発作の有用なsurrogate markerであることを示したといえる。 なお、発作後期スキャンの血管拡張はシロスタゾールの半減期や、MCAなどでは認められなかったことを考慮するとシロスタゾールの効果では説明できないのではないかと考察されている。 1つの可能性として、時間経過と共に硬膜三叉神経の活性化が拡大して、血管拡張を両側性に生じさせたのではないかと述べられている。